穏やかで、落ち着いていて、品の良い生徒。普段の彼女から見受けられる印象とは正反対の行動を、俺とふたりでいるときの桂はよく見せてくれる。
 それを指摘すると必ず桂は眉を寄せ、「どうせ子供っぽい性格です!」と拗ねた顔を見せていた。
 俺より階段7つ分高い位置にいる桂が、くるりと俺に振り返る。
「清く貴ぶ。綺麗な名前よね」
 階段7つ分低い位置から、俺は、照れとも苦笑いともつかない表情で桂を見上げた。
 確かに悪い名前だとは思っていない。けれども平凡を絵で描いたような俺では完全に名前負けである。清く貴ぶ、など、どちらかと言えば桂にこそ似合いそうな漢字であるというのに。