部活動に勤しむ運動部員の声や、虫達の合唱。開け放たれた窓から校内に響くそれらを、いまは桂とふたりで聞いている。俺たちが初めて会話することとなった場所に向かい、並んで歩きながら。
 すぐ隣で艶やかな黒髪が揺れる。俺と桂の組み合わせは校内ではすでに見慣れた光景となったらしく、俺たちを目撃してもあからさまな驚きの表情をよこす生徒はほとんどいなくなっていた。
「お・の・だ・き・よ・た・か」
 一文字口にする度に、一段階段を上る。
 小学生がジャンケンと共に行う遊びを思わせるそれに、俺は桂にばれないように込み上げる笑い声を飲み込んだ。