「ここで…いいんだよね?」

 茶色の古紙と目の前の建物を交互に見る。

 チューブに揺られる事一時間。さらには徒歩で30分。

重いトランクを引きずる様にしてたどり着いた場所は、イギリスの端。

地名も分からないようなびっくりする程の田舎。

(電話番号がなかったから…直接話しに来ちゃたけど。)

「…ここで合ってるのかしら。」

 いぶかしげに眉を寄せて見上げるその先には、田舎には似つかない大きな洋館が立っている。

築100年は経っている様な重厚な佇まい。白い壁は綺麗に修復されているみたいで、シミ一つ無いように見える。

 威圧的で圧倒的な存在感。

そんな白亜の豪邸を守る大きな門は微かに開き、静寂の中、キイキイと音を響かせていた。

(うわぁ。なんか…スゴい雰囲気ねぇ。)

中世のお城ばりの豪邸にしどろもどろしながらも、エリザは門をくぐり抜け、白亜の洋館に進み行く。

そして重厚なドアの前で立ち止まり深く息を吐いた。

「大丈夫、きっと大丈夫。」

不意にドキドキし出した心臓を手で押さえる。

そして金縁のチャイムを押そうと手を伸ばす……がその時、

(えっ…)

ギイーっと軋む音と共にドアが開かれた。