「顔が真っ赤だ。」

暗い部屋でも分かるよ、と目を細めて笑う。

「~~っ!!」

(貴方のせいでしょ…!!)

声を発する事も出来ず、真っ赤になった頬を両手で隠しながら、指の隙間から男を睨み付ける。

そんなエリザの様子が面白いらしく、男はまた声を出し激しく笑った。

 そして、暫くしてから深い息を吐くと、

「さぁ、コートを脱いで。治療してあげるから。」
と身を溶かすような笑顔を漏らしながら、優雅な足取りで近づく。

そしてエリザの前に向かい合うと、失礼。と微笑みながら会釈をし、膝をついた。

そんな紳士的な姿にエリザは、頬の赤みと乱れた呼吸を必死に整えるしかなかった。

(なっ、なんか心臓に悪いわ、この人。雰囲気がコロコロ変わって…。何処かの国の王子か何かなの?)

イヤイヤ、そんなまさかねっと馬鹿な考えを、軽く首を振って打ち消しながら、言われた通りコートを脱ぐ。

 そしてエリザは目を見開いた。

(うそ…気付かなかった。)

視線先には、半袖のブルーのニットと、そこから伸びる白い腕。

 その白い腕には、尻餅をついた時に擦れたのか、確かに、血が滲んだ様な傷が出来ていた。

「本当だ…。怪我してる。」

「でしょ?君は気づいて無かったみたいだけど。」
と唖然とするエリザににっこり微笑みかけると、救急箱から、消毒液の入った小瓶を取り出した。

そんな様子を目を見開き見つめるエリザ。

その心はある疑問で一杯だった。

(自分でも分からなかった微かな傷…それを貴方は最初から知っていた。)

「どうして…分かったの?」