半ば引きずられる様に連れてこられたのは、さらにホコリっぽい部屋。

色んなものが、天井に届きそうなほど積まれている。

(お世辞にも…綺麗って言えないわね。)

「そこに座って。」

外観と内観のギャップに驚いていると、低い声が聞こえ、部屋の隅にある椅子を指差す。

 そしてそっと手を離す。

(あ…。)

突然消えた冷たい感触がなぜか寂しく思いながらも、大人しく言われた通りに椅子に座るエリザ。

そして目の前で探し物を始めた男を盗み見た。

(…うん。やっぱり綺麗な人。)

暗くホコリっぽい部屋の中でも、その存在感は凄まじいほど伝わってくる。

 しなやかで逞しい。

真っ白な肌が小窓から射し込む光で、キラキラと輝いている様にみえて、

「綺麗ね…。」

 と思わず声に出してしまい、ハッと気付いて、直ぐ様口元を押さえる。

 カッと顔が赤くなった。

(わわっ、まずいっ!聞こえちゃったかしら…!?)

思わず心の声が漏れて、しまったと焦る瞳で前を向く。

 すると探し物が見つかったらしく、男もまたエリザを真っ直ぐ見据えていた。

最初は怪訝そうだった顔も、今では柔らかく、どこか面白がる様な感情が、瞳の中で見え隠れしている。
口元は綺麗な弧を描いて。

「さぁ、準備はいいかい?」

と茶目っ気のある声でにっこり微笑みながら、右手に持つ小箱を掲げた。

そんな突然変わった雰囲気に頬が、これでもかって位に赤くなる。

そんなわかりやすいエリザの反応を見て、男は肩を揺らして笑った。