粛々と儀式が進んでいく。



隣では白柄彦が澄ました顔で立っている。



その顔がさっきの野次馬顔とは似ても似つかなかったので、芦多は必死で笑いを噛み殺した。



長い誉め言葉を淡々と聞き流し、やっと大会が終わった。



待ちに待った退場。



正直、戦って結果さえ出ればあとの儀式的なものは芦多にとってどうでもいい。



それは白柄彦も同じだったようで、欠伸を噛み殺している。



「ああ、終わった。」



この際、あんな長たらしい挨拶なんか省いてもらった方がありがたくないか?というもっともな意見に賛成。 



芦多もつられて欠伸を噛み殺した。



垂れ幕から中に入ろうとする二人の前に、わっと人が群がった。



たちまち、道が塞がれる。



「やれやれ、時間外勤務だ。」



ふうっと心底面倒くさそうに言い、白柄彦はいかにも優等生な笑顔を浮かべた。



「よくやった!」


「まさに、期待通りだったぞ!」



口々に、賞賛の言葉を叫ばれる。



期待通り、か。



これで負けていたら、散々陰口を叩かれるところだ。



白柄彦に負けていたらマシだ。



もし、彼以外の人に負けていたら…。



考えるだけでため息が出る。



柔和な笑顔を振りまいている白柄彦とは対照的に、芦多は無表情を貫いた。