そうか、と呟いて芦多は白柄彦のあとを追った。



「これに懲りて、もう二度と出場されないんじゃないか?」



芦多の言葉に、白柄彦はふっと笑った。



「まさか。
そんな可愛いお人柄ではないだろう。
今度こそお前に勝つために策を練るだろうよ。」



白柄彦の目が悪戯に光った。



「確かに。
私も用心しなくては。」



芦多もつられて頬を緩めた。



既に出来ていた人集りの後ろにつけると、芦多達は名前が呼ばれるのを待った。



まず、貴族組から上位3名が名前を呼ばれる。



最後に辰之助が得意気に進み出た。



白柄彦が隣でくすりと笑う声が聞こえる。



隣を見ると、目が合った。



な、都合がいいだろう?



その目がそう言っていた。



次に、芦多達が呼ばれた。



白柄彦に続いて、前に出る。



その道すがら、仲間に背中を叩かれ、口々に賞賛を受けた。



前に出て、褒美を受け取る。



驚いたことに、今回の手渡し役は、灯世だった。



驚いて放心している芦多の前に、おろおろと進み出る灯世。



本人も戸惑っているらしい。



「灯世、お前がこんな大役を仰せつかっていたなんて、知らなかった。」



小言で言うと、灯世も早口に返してきた。



「私もです。
ついさっき、これを渡せと言われて…。」



そう言って灯世が差し出したのは、一振りの刀だった。