中には既に来客がガヤガヤと動き回っていた。



一礼し、案内をした男は帰っていった。



「灯世、行きますよ。」



八重に言われ、灯世は倣って正座をし、頭を下げてから中に入った。



畳はこの日の為に新しいものに取り替えたのか、いい井草の匂いがした。



それで少し気分がほぐれ、歩き方も硬くならず、しとやかに歩けた。



灯世がキョロキョロと辺りの人を見渡している間に、八重は一直線に山城の辰太郎のもとへ向かった。



慌てて、でもそれを悟られない程度に素早く後を追う。



「大守護者の称号を頂きました、八重にございます。」



合わせて、灯世も正座をした。



「よくぞ参った。」



ゆったりとした声で、辰太郎は言った。



以前、何度か会ったことはあったが、こんなに近づいて見たのは初めてだ。



灯世はこっそりと辰太郎を観察した。



恰幅が良く、それでいて鈍っている感じはない。



武術が得意という噂は本当か。



「灯世もよく参ったな。」



どっしりと響く声とは対称的に優しい声がかけられた。



急いで頭を下げる。



あわあわとしているうちに、辰太郎は八重に向き直った。