「勝負あり!」



灯世にとって何時間にも思えた時間ののち、審判が試合の終わりを告げた。



ほうっと力が抜ける。



隣では政隆がぜぇはぁと息をしていた。



「自分の試合より緊張するわ。」



疲れ切った様子で、政隆は汗を拭う。



いよいよ、結果発表だ。



「どちらが勝つんでしょうね。」


「白柄彦は攻撃を仕掛ける大胆さを持っていますが、芦多にはそれがありません。
しかし、芦多には攻撃を冷静にかわし、反撃の的確さがある。
難しいところですな。」



政隆はポリポリと頭を掻いた。



太鼓が鳴り響く。



地響きのように、段が揺れた。



「勝者。」



一際強く、太鼓が叩かれた。



「芦多!」



わあっと歓声が上がる。



今度ばかりは灯世も加わった。



「やった、芦多様が!」


「はっはっはっ!
今年も優勝だ!」



政隆も嬉しそうに朗らかに笑う。



灯世は夢中で拍手を送った。



と、芦多がこちらを振り返った。



「おめでとうございます!」



聞こえたかはわからなかったが、灯世は精一杯叫んだ。



言いたいことは伝わったらしく、芦多は槍を持った拳を高々と振り上げた。



一層、会場が沸く。



芦多も嬉しそうに顔を綻ばせている。



灯世はみんなに負けないくらい、拍手を送った。