会場の拍手が収まると、いよいよ武闘派の試合だ。



どうやら芦多は最後の方らしく、なかなか出て来ない。



灯世はだんだん退屈になってきて、政隆と話をしていた。



時々、政隆が「わしの教え子です。」と選手を指差した。



その時は灯世もしっかりと試合を観戦した。



そして、いよいよ、芦多の番がきた。



「おおっ、お出ましだ。」



政隆も人一倍拍手を送る。



気のせいか、会場の声援も今までで一番大きい気がした。



相手は第二ブロックを勝ち上がってきた白柄彦という青年で、政隆によると強いらしい。



芦多と互角で、いつもこの二人がしのぎを削るという。



「まあ、言うなれば目玉ですわな。」



そう言う政隆はどこか誇らしげだ。



広場に面した段前では、少女達の群れが出来ていた。



「わしらも行きますか?」



さすがに貴族席まで人が溢れ出してはいなかったので、政隆は灯世を誘った。



「はい!」



一番前でみたい。



灯世は政隆と一緒に段を降りていった。



「芦多、しっかりな!」



政隆が身を乗り出して叫んだ。



一瞬、芦多がこちらへ目を向ける。



灯世も一生懸命、手を振った。



芦多は少し驚いたような顔をして、そして微笑んだ。



ドンドンと太鼓が響き出す。



「始め!」



開始の合図で二人は槍を構えた。



滑るように、二人の身体が円を描く。



素人目にも、二人が強者であることが窺える動きだった。