灯世は大人しく芦多の言うとおりにした。



「また。」



灯世も辰之助に聞こえないように、返す。



背後で芦多が笑った気配がした。



灯世が歩き出すと、辰之助はどんどんと速度を速めた。



「辰之助様?」



答えず、辰之助は歩く。



そして、段に上がり、さっきと同じところに灯世を座らせた。



「ここにいろ。」


「私は…。」


「ここにいろ。
今度、あの男と話したら許さない。」



灯世は呆気にとられて、去っていく辰之助を見送った。



どういうこと?



あんなに怒るほどのことを自分はしたのか?



そんなに、芦多の身分が低いのか?



灯世は唇を噛んだ。



なんだか、私は辰之助様のものみたいだ。



話すことを禁止されるなんて、信じられない。



なら、私は誰と話せばいいの。



この屋敷の中に、話し相手などいない。



かと言って、辰之助と話しているのも気が詰まる。



「灯世殿、やってしまいましたな。」



背後から声をかけられ、灯世は飛び上がった。