が、突然灯世は誰かに身体を引っ張られた。



「灯世!」



振り返ると、辰之助が息を切らして立っていた。



「さっき、灯世が連れ去られそうになるのを…。」



ぜいぜいと肩で息をして、辰之助は芦多を睨んだ。



「お前、何をしている?」



灯世は芦多を仰ぎ見た。



無表情だった。



「あ…。」



芦多と辰之助を交互にみる。



やはり、似ていた。



「灯世はお前如きが関わって良い相手ではない。
立場をわきまえろ。」



低い声で辰之助が言い放つ。



そういう言い方は…。



「行くぞ、灯世。」


「え、あの…。」


「灯世!」



灯世はビクリと身を竦ませた。



「行け。」



辰之助には聞こえない音量で、芦多は灯世を促した。



「また、今度。」



振り返ろうとすると、「振り返るな。」とすかさずとめられる。