「正直に話してくださるんですね?」


「そのつもりだ。
そのつもりだった。」


「え?」


「この間、政隆に諭された。
こういった公の場で、私はよく名前を呼ばれるし、何より、灯世。」



芦多は言葉を切って、灯世を見つめた。



「お前は私と辰之助様の見分けがつく。」



灯世は首を傾げた。



「当たり前でしょう。
誰でもつきます。」


「いや。
長い間私を見ている者さえ気付かないときがある。」


「でも、さっきは侍女が…。」


「あれは、着物が違うからだ。」



そう…なのか?



「私が馬鹿だった。
すまない。
灯世だから教えなかったわけではないんだ。」



誤解しないで欲しい、と芦多はすがるように灯世を見つめた。



「はい。
私もさっきは言いすぎました。
ちょっと、衝撃的でしたので。」



灯世は頬を赤らめた。



恥ずかしい。



感情に任せて騒ぎ散らすなんて。



「いや、種を撒いたの私だ。
…ここでは話しにくいから、場所を移そう。」



灯世は頷いて、芦多に引かれるまま歩き出した。