「完璧です。」



灯世が小さい頃から世話になってきた使用人の中でも古株の丈(タケ)が満足に笑った。



「胸を張って、行っていらして下さい。」



心地よい低めの声が、灯世に自信を持たせる。



ニッコリ笑って頷き、灯世は立ち上がった。



「行ってきます。」



部屋を出る時、照れたように付け足すと、一同はそろって応えてくれた。



「行ってらっしゃいませ。」



足取りも軽やかに、緊張も程よくほぐれ、まさに気分は天にも昇る思いだ。



「母様。」


「はいはい。」



障子の外側から急かされ、八重は笑いを含んだ声で返事を返した。



「もう少し待って。」


「もう待っています。」



まったく、出かける前からこんなんじゃ、何か粗相をしそうだわ。



密かに八重はため息をついた。



「灯世、落ち着かないなら置いて行きますよ。」


「落ち着いています。」



聞いているそばからそわそわとしているのが影でわかる。



頭をふりふり、支度を終えた八重は部屋を出た。



「では、行きましょう。」



文字通り、灯世は飛び跳ねるように後を追った。