「千歳さんはここで暮らして長いんですか?」


「ん~、物心ついたときからだね。」


「へぇ。
ご両親はどんなお仕事を?」



灯世の問いに千歳は首を傾げた。



「わからない。
俺、親が誰か知らないんだよね。
不思議なことに、教えてもらえないし。」



それは…。



どういうこと?



「ここにいる奴らは結構そんなんばっかだよ。
さっきの…秋人だっけ?
あいつもだし。」



俺らと一緒に暮らしてる同年代の男共はみんなそんな感じかな、と千歳は笑った。



「山城様に引取られた方たちが多いのですか?」


「う~ん、違うと思う。
山城が子どもを集めてたみたいだよ、俺の情報によると。」


「なんだか、複雑ですね。」



顎に手をあてる灯世をちらりと見やり、千歳は内心苦笑した。



そんなんじゃないんだよねぇ。



お偉いさんの身代わりの型として生かす為に俺たちは連れてこられたんだ。



だんだん育つにつれて、辰之助とは似ていない顔になる奴もいた。



そういう型たちはどうなるんだろう、と考えたことがある。



・・・そのコタエは幼い千歳には受け入れがたいものだった。



もし、俺がここに連れてこられていなかったらどんな人生を送っていたんだろう。



千歳は白い高い壁でしきられた空を見上げた。



「千歳さん?」



灯世の声で我に返る。