無意識に速度は落ち、そろりそろりと歩みを進めた。



もう少し…。



もう少しで鉢合わせる。



灯世はぎゅっと着物を握った。



「わあっ!」



向こうから現れたのは、灯世と同じくらいの少年と…秋人だった。



「もしかして、灯世さん!?」


「はい…。」


「探しましたよ。」



声に不満が窺える。



「すみません、迷ってしまって…。」



秋人への動揺を、彼は違うほうへとってくれたようだ。



「確かに、ここは広いもんな。
あんた、ここへ来てか籠もりっきりだったっていうし。」



うんうんと頷いた少年を、秋人がたしなめた。



「大守護者の娘に失礼な言葉遣いだぞ。」


「いいじゃん、年確か一緒なんだからさ。
君、16?
ほら、普通にいこうよ。」



呆れたように首を振り、秋人は灯世を見た。



「夕食の準備が整っております。
どうぞ。」



丁寧に、かつ業務的に指された方に、灯世は歩き出した。



「俺は千歳。
仲良くしような。」


「はい。」



ニッコリ笑った灯世に、千歳は倍の笑顔を返した。



少々、というか全く使用人に向かない人柄が可笑しい。



この方は、人から好かれているんだろうな。 



先に立って歩き出した千歳を見やり、灯世はフフッと笑った。



次いで、ちらりと律儀に斜め半歩前を歩いている秋人に視線を移す。



無表情だ。



歩き方にも無駄がなく、流れるような身のこなし。



うっかりすると、灯世よりもしとやかだ。



……面白くない。