「灯世?」



そっと、頬に手を添えると、灯世はようやく顔を上げた。



「どうかしたのか?」


「…………また、会えますか?」



自分も思っていたことだ…。



「私は会いたい。」



会えるかどうかは濁した。



会える確率がとても低いのは誤魔化しようがない。



「私は、また会いたいと思っている。
見かけたら声をかけてくれ。」


「はい。」



手を引くと、今度は素直に動いた。



そっと廊下に出、急ぎ足で『型』の人間が住んでいるエリアを抜け出す。 



真剣での勝負よりも冷や汗ものだ。



中庭まで足音を忍ばせて歩く。



「ありがとうございます、もうここで。」



道がわかるようなので、芦多はスッと後ろに下がった。



「また。」



ただそれだけ言って、背を向ける。



誰かに見つかると厄介だ。



それに何より、しんみりした雰囲気が嫌いだった。



「また…。」



灯世から返ってきた声を背中に受け、芦多は早足に廊下を戻った。



駆け足気味に回廊をあとにし、部屋まで戻る。



角を曲がったとき、誰かとぶつかった。