「それじゃあ…。」



うーん、と困ったように灯世は考え込んだ。



ややあって、灯世は芦多に問うた。



「どの季節に生まれましたか?」


「秋だ。」



すると、何故か灯世はクスクスと笑った。



「なんだ?」


「いえ、私も秋生まれなので。
色々縁があるなあと。」



そうか、灯世も秋なのか。



芦多は思わず微笑んだ。



驚くほど自然に頬が動く。



笑うのはとても楽しいことなのだな。



芦多は初めてそう思った。



「秋なら…柿、お月見、十五夜、…涼しくていい季節ですよね。」



灯世は目を細める。



秋という季節についてこんなに嬉しそうに笑う人を初めて見た。



芦多は灯世の感受性の豊かさに驚いた。



「他に同じ名前の方がいらしたらあれですけど…。
秋の人と書いて秋人(アキヒト)は?」



ああ、生まれの季節を訊いたのはその為か。



それにしても呼び名一つにこだわるな。



だが、芦多の名前を気に掛ける人間は身の回りに少なく、芦多にとっては新鮮な体験だった。