何度も何度も布を取り替え、看病すること三時間。



ぴくりと灯世が動いた。



芦多は柄にも無く驚いて身体を跳ねさせた。



しばらく息を詰めて様子を伺っていると、ゆっくりとまぶたが開いた。



しばらくボーッと天井を見つめ、数回瞬きを繰り返す灯世。



そして、瞳が揺れた。



「動くな。」



今にも飛び起きそうだった為慌てて声をかけたが……失敗った(シクジッタ)。 


ビクリと身体を強ばらせ、灯世は震えた息を吐き出す。



恐がらせてしまった。



もう少しマシな声は出せなかったのか。



芦多は努めて優しい声を出した。



長い間命令口調でしか話さなかった為(誰かさんの身代わりで)、それに慣れてしまったからだ。



「まだ、動くな。」



不安そうに眉をハの字に下げ、灯世はゆっくりと芦多を見た。



まだ、少し目が揺れている。



「大丈夫か?」



無表情に固まったままの灯世におずおずと声をかけた。



と、クリッとした目を大きく見開いて、小さくあっと声を漏らした。



「私を覚えているか?」


「辰之助様…ッ。」



芦多は胸を抉られたような気持ちを味わった。