血飛沫が二人のどちらのものでもないとわかると、敦賀はじゃあなんだと問うた。



「あ~、芦多様?」



説明を求められ、芦多は見たままを伝えた。



場が、しーんとなる。



「それは…。」



敦賀の顔は、さっきよりも血の気がうせている。



真っ白な顔をしていた。



失礼します、と断って、灯世の首筋に指をあてる。



芦多は無感情に、それを目で追った。



あてられた敦賀の指が、動かない。



微かに震えていた。



「芦多様、もう…。」



涙声。



薄々、わかっていた。



ただ、現実のものとして感じられない。



「死ん…。」



一人が、小さく呟いた。



敦賀の肩が、大きく震えた。



灯世。



置いていくなと言ったのは、灯世のほうだったのに。



お前が私を置いていく。



あんなに呆気なく、片はついた。



蛇儒を倒しても、灯世が生きていなければ意味がない。



呆気なく、自分と灯世の生活に終止符が打たれた。