しばらく走り、やっと戦場に辿り着いた。



喧騒が耳に飛び込んでくる。



灯世は必死で芦多の気配を辿った。



こっちのはずだ。



空にサクを飛ばせ、確認にやる。



程なくして、サクは灯世のもとへ戻ってきた。



“急いで!”



サクの言葉に、心臓が握りつぶされたかのような感覚に陥った。



まさか、芦多様が…。



いやな考えを振り払い、ただひた走る。



サクに先導され、灯世は祈る気持ちで手綱を握った。



木々の間を抜けると、ザッと広い野原が眼前に広がった。



あちこちで怒声が聞こえる。



その手前に、膝をついた芦多とそれに向き合っている蛇儒が見えた。



「芦多様…!」


“足止めする。”



サクがひゅんっと飛んでいった。



そして見る見る間に大きくなり、蛇儒の使い魔に襲い掛かった。



不意打ちを食らったカラスは一声ギャアッと鳴いて、飛び退った。



それに気付いた蛇儒が、さっと後ろを振り向く。



だが、一足早く、灯世が術を放っていた。



呻き声を後ろに聞きながら、灯世は芦多に駆け寄った。



「だから、言ったではないですか…!」



驚いて固まっている芦多の肩を掴んで揺さぶる。



芦多は灯世にされるがままだった。



「灯世…。」


「予定時刻ピッタリに出くわして、怪我までして!
もし私が一足遅かったら、どうなってたと思います!?」



凄い剣幕の灯世を力で押さえつけ、芦多は立ち上がった。