ガサリと、音がした。



振り向くと、



「また会ったな。」



蛇儒だった。



無表情のまま、芦多を見ている。



芦多はゆっくりと振り返り、対峙する。



なぜか、焦る気持ちはなかった。



ただ、あぁ来たかと思うだけだった。



「今朝、姫にご挨拶に伺ったのだが、効果はないようだな。」


「それしきのことに怖気づいている暇はない。」


「頼もしいな。」



感情のない声でそういわれても、こちらが反応に困る。



隣で敦賀が不審そうに蛇儒を見ているのが目に入った。



そして、向こうも気づいたらしい。



顔だけ、敦賀に向けていった。



「主の部下かな?」


「ああ。
優秀な部下だ。」



言ってしまってから、しまったと頭を抱える。



これでは、敦賀も狙われる。



「行け、敦賀。」


「え?」



戸惑ったように、敦賀が芦多を仰ぐ。



「いいから、行け!」



倒すものと思っていたらしい。



敦賀はわけがわからないという顔をしている。