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芦多が見えなくなってから、やっと灯世は息を吐いた。
これから自分も行かなくてはならない。
最後尾に待っている護衛のもとへと歩きながらも、考えるのは芦多のことだけだ。
大丈夫だろうか。
空を見上げる。
太陽は、まだまだ地面に近い。
…太陽が昇りきったその時、芦多様に危険が…。
怖くて、気を失ってしまいそうだ。
心臓が壊れそうなくらい、脈打つ。
気のせいか、呼吸も苦しかった。
「灯世様、そろそろ。」
声をかけられ、ハッと居住まいを正す。
みんなには、夢のことは言っていない。
混乱を招くからと、芦多が嫌がったのだ。
知らせておくほうがいいと言った灯世の言葉に、頑として頷かなかったのだ。
もし、自分がその時に死ぬのなら、運命だと。
しかし、灯世としては、避けられることなら全力で回避して欲しかった。
お願い、芦多様が無事でありますよう…。
馬に乗せられながら、灯世は必死に祈った。