急いで駆け寄る。



必死で足を動かした。



倒れた後、灯世が横目に芦多を見た。



確かに、目が、合った。



だが、灯世は次の瞬間には焦点を外し、完全に意識を失っていた。


滑り込むようにして抱き込む。



心臓はまさに早鐘。



呼吸は震えている。



これはやっと会えたという興奮からか、何が何だかわからない不安からか。



取り敢えず芦多は灯世を抱き上げ、部屋に運ぶことにした。



自分の部屋か、辰之助の部屋か一瞬迷って、自分の部屋を選んだ。



早足に進む。



誰かに見られたら厄介だ。



芦多はなるべく人の通らない道や、型の人間にしか使用を許されていない通路を通った。



幸運にも誰とも会わずにたどり着くことが出来た。



障子をピッタリと閉めてからホッと息をつく。



抱えていた灯世を布団に降ろしながら、もう一つ。



灯世はまだ目を覚ます気配がない。



ひとまず、辰之助の部屋に寄り、何かいる物を持って来よう。