きっと、自分の顔は相当強張っていたに違いない。



芦多が少し慌てたように、言った。



「予想だがな。」



しかし、芦多はさっき、何が何でもと言った。



そして、灯世もそう思う。



もし、子どもが生まれれば、また自由に動けなくなる。



辰之助も今度こそ傍を離れようとはしないだろう。



屋敷に帰ったとしても、たいして明るい未来が待っているわけではなかった。



「…そうなるなら、私は国を守るために生きたい。」



真っ直ぐに見つめられる。



灯世は哀しげにそれを見返した。



「私の気休めでもいい、お前を護るために戦っていると思わせてくれ。」


「実際、芦多様は私を護ってくださってます。」


「なら、尚更。」



灯世は黙って身体を預けた。



これが返事だ。



芦多は優しく、抱きしめてくれた。



「灯世、お前が私のすべてだ。」


「私も。
だから、お願いですから、気をつけて。
私を独りにはしないでくださいね。」



胸に顔を埋めているので、表情は見えないが、芦多が頷いた気がした。



「もし、私が死んだとしても、灯世も後を追うなんて馬鹿なこと、しないでくれ。」


「…それは、随分と酷なことですよ。」


「わかっている、身勝手なのは。
だが、灯世、生きて欲しい。」



それは、私も同じなのに。



むしろ、私の願いのほうが強いのに。



芦多様は、もう少し自分のことに気を配るべきだ。



灯世は一層強く、芦多に抱きついた。