そしてその声の主が灯世だとわかると、優しく微笑んだ。



「灯世か、どうし…。」



灯世は芦多がみなまで言わないうちに、その首に抱きつく。



芦多は驚いて、灯世を抱きとめた。



「灯世、どうしたんだ。」



訊かれても、答える余裕はない。



心臓が、早鐘のごとく鳴り止まない。



ただ震えて芦多に抱きつくことしか出来なかった。



芦多は灯世の脈拍を感じたらしく、背中をさする。



「大丈夫だ、灯世。
大丈夫…。」



いつもならこの言葉に助けられるのだが、今回は違う。



何が起こっているのかは、灯世しか知らない。



もし知っていたのなら、大丈夫だなどとは言えはしない。



やがて、灯世の呼吸は泣き声へと変わる。



芦多は慄いたように身体を離した。



「灯世、何があった?」



灯世は芦多の胸に顔を埋めた。



「さっき、蛇儒が私に接触しました。」



芦多が殺気立つのがわかった。



慌てて言葉を続ける。



「夢に、出てきたんです。」



芦多の身体から力が抜けるのがわかった。



少しほっとした。



「そこで、蛇儒が私に言ったんです。
芦多様を、殺すと。」



声が、震えた。



怖い。



怖くてたまらない。



もし、蛇儒がそれを実行するなんてことがあったら、灯世は耐えられない。