でも、あれはあれでいい体験だった気がする。



ただ、



「やっぱり布団の中の方が好きですけど。」


「……悪かった。」



萎れる芦多。



灯世は芦多の胸に口付けた。



芦多がくすぐったそうに微かに身をよじる。



「私、あれはあれで好きですよ。」


少し笑ってみせる。



「でも、やっぱり布団の方がたくさん触ってもらえるから、布団が希望ですね。」



芦多はいきなりガバッと灯世を抱き締めた。



突然のことに息をのむ。



「芦多様!?」


「お前からそういう希望を聞けるとは思っていなかった。」



顔を見ると、少年のように無邪気な笑顔。



灯世はえもいわれぬ愛しさで胸が熱くなった。



「だが、私はふかふかの布団という条件を追加したい。」



芦多はさっきとは打って変わってむん、と顔をしかめた。



どうも地べたの感触に近いこの寝所はお気に召さないらしい。



灯世は吹き出してしまった。



確かに、快適とは言えない。



「でも、私は芦多様の隣で寝られるなら屋敷の布団よりこちらを選びます。」


「嬉しいことを言ってくれる。」



甘い口付け。



いつの間にか、芦多は灯世を後ろから抱きすくめるようにしていた。



首筋に芦多の唇が這う。



くすぐったいような、気持ち良いような。



不思議な感覚に襲われる。