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朝、目が覚めると、そこは芦多の天幕だった。



一瞬、わけがわからず辺りを見回す。



そうだった、昨日の夜、自分が一緒にいさせてくれと頼んだんだった。



横を見ると、芦多の寝顔。



灯世は芦多の腕の中で眠っていた。



まだ辺りは暗く、夜は明けていないらしい。



まだ起きなくてもいい。



灯世はもう一度、芦多の腕の中に身体を滑り込ませた。



温かい。



筋肉質な胸板に顔をすり寄せる。



芦多の鼓動が聞こえた。



心音まで物静かだ。



安心する。



目を閉じて幸福感に浸っていると、ずずっと芦多の身体が動いた。



見上げると同時に、至近距離に芦多の顔。



ゆっくりと唇が重なり、ゆっくりと離れた。



「おはよう。」



寝起き特有の低い声。



これを聞くのはまだ二回目だ。



芦多はごしごしと目をこする。



うっすらと目を開けてぼーっとしている芦多の頬に、灯世は手を添えた。



「気分は?」


「最高に満たされている。」



その言葉が嬉しくて。



体調を訊いたつもりだったのに。



「灯世は?
身体、大丈夫か?」


「はい。」



実は少々つらい。



灯世はぐったりと身体を横たえたまま芦多の頬を撫でた。



「昨晩は無理をさせたな?」



視線で問う。



芦多は灯世の身体に布団をかけ直した。



「野外に連れ出した。
立ったままはきついだろう?」


「……初めての体験でした。」



不思議だった。