「何故泣く?」



驚いた芦多は動きを止める。



灯世は目を瞬かせ、芦多に抱きついた。



「わかりません。」


「どうしたんだ。」



芦多も優しく抱き返す。



どくどくと、灯世の鼓動が聞こえた。



「私、もう一日だって芦多様と離れていたくない。」


「灯世…。」



突然、どうしたんだろう。



昨日も会って、たった数時間しか離れていなかっただけなのに。



いつも気丈な灯世が弱く見えた。



「芦多様がまた遠くへ行ってしまいそうで怖い…。」



灯世は静かに肩を震わせる。



「大丈夫だ。
今回は同じ場所にいる。」


「でも、下邑に行かれたときよりも格段に危険です。」



それはそうだ。



だが、言えば灯世だって危険だ。



隊の後ろにいるとはいえ、最前線に身を置いているのに変わりはないのだ。


「お前も危険だぞ、灯世。
安心しろ、何かあれば私がすぐ駆けつける。」


「私も、芦多様の力になりたい。
必要とあらば、私を妖をつかってみせます。」



芦多は強く灯世を抱きしめた。



あれだけ理念に反すると言っていたのに。