兵士達はまだ夕餉の時とかわらず騒いでいる。
芦多は灯世の手を引いて林の中に入っていきながら、笑った。
ずっとこんな風に楽しく語っていられたら…。
「芦多様、どこへ行くんですか?」
危なっかしく足元くぐらつかせながら、灯世が懸命に芦多のあとをついてくる。
「ん?」
芦多は笑って誤魔化した。
ただ、二人になりたかった。
あの夜、初めて灯世を抱いてから。
もっともっと、灯世を傍に置いておきたかった。
さっきだって、人がいなければずっと抱きしめていただろう。
「芦多様?」
暗闇が怖いのか、灯世は不安そうに芦多を呼んだ。」
「怖いか?」
立ち止まって尋ねると、灯世はきょろきょろと辺りを見回しながら小さく頷いた。
「暗闇は嫌いです。」
「戻りたいか?」
問うと、灯世はふるふると首を振った。
「芦多様がここへきた目的の見当はついていますから。」
「ほう。」
当ててみろ、と囁くと、灯世は恥ずかしそうに俯いた。
「どうした?」
もうこの状況にも慣れただろうに。
「灯世?」
悪戯に、笑う。
灯世は躊躇ったのに、背伸びをした。
芦多は屈んで、背を合わせる。
唇が重なった。
今回は、数秒ののち、ゆっくりと唇が離れる。