焚き火で照らされた灯世の横顔が芦多を労う。



「灯世。」


「はい?」



改まって呼ばわった芦多を、灯世は不思議そうに見返した。



こっちを向かなくていい、とやや強引に灯世の頬を押す。



後姿から困惑した気配が伝わってきた。



「どうかしましたか?」


「ん…。」



ただ、無性に言いたくなった。



「私は幸せだ。」


「…いきなりどうしたんですか?」



そういう灯世の声が恥ずかしげだ。



「素直に言っただけだ、悪いか。」


「悪くありません。」



慌てて、灯世が身体を起こす。



「私も、幸せです。
幸せすぎて、離れるのが怖い…。」



さっきまで笑っていたのに、どんどんと灯世の顔が沈んでいく。



眉を下げ、芦多を窺った。



「私を置いて逝かないでくださいね。」


「私だって離れたくはない。」



死んでたまるか。



これから激しくなるであろう戦でも、生き残ってみせる。



「愛している。」



最近、なんの抵抗もなく言えるようになった言葉。



やけによく聞こえる…。



静かだなと思って目を開けると、すべての目が自分達に集まっていた。



さっき、行動を控えようと決めたばかりなのに、とまたもや後悔する芦多だった。