「いや、いい。
また新たな確執を作るのはよしたほうがいい。」


「わかった。
また何かあったら伝令を使わす。」


「ああ。
遠慮せず、助けがいれば言ってくれ。」



爪鷹の肩をぽんと叩く。



爪鷹はふっと笑った。



「俺から一つ、助言をやる。」



芦多は首を傾げてみせた。



爪鷹はにやりと笑う。



「今のうちに出来るだけ灯世抱いとけ。」



カッと頬に血が上った芦多を笑い、さらに続ける。



「戦中だとか言ってないで。
今しか出来ないかもしれないんだよ~?」



ちゃらけた素振りをしてみせ、爪鷹は芦多の肩に手を置く。



「しんみりなんか、してちゃ駄目。
灯世を独り占めできる絶好の機会だと思え。
お前があんまり背負い込みすぎると隊にも影響が及ぶ。」


「しかし、私がうつつを抜かして…。」


「芦多はそれくらいしてて丁度いい緊張感なの。
今のままじゃ、いつか過労で倒れるよ?」



こんなことくらいで倒れはしない。



聞いていれば、随分と芦多に都合のいい話だ。



死者が怒って蘇ってきそうだ。



「はいはい、俺が調子に乗りましたよ。
ったく、変に真面目で大変だよ。」



呆れたように爪鷹は言って、天幕を出て行った。



どうして私が呆れられなければいけないんだとぶつぶつ言いながら、芦多も後を追う。



「待て貴様。」


「待たないよ。
芦多こそ、お姫様が陣地でお待ちでしょ?」



また灯世を出してきた。



爪鷹め、完全に楽しんでいる。