敵の追跡を警戒しながら野営地に戻る。
兵達はみなくたくただった。
「報告します。」
隊を回ってきた敦賀が疲れた様子で芦多のところまできた。
「全班合わせて、死者12名。」
案外少ない。
芦多はほうっと息をついた。
「そうか。
…ご苦労。」
敦賀は弱々しい笑みを浮かべて、芦多の天幕を出ようと背を向けた。
「待て。」
不思議に思った芦多は敦賀を呼び止めた。
「……まさか知人が戦死したか?」
もしくはただ単に疲れたか。
後者であってほしいと思った。
が、現実とは残酷なもので、敦賀は笑みを張りつけたまま、言った。
「実は、長い付き合いだった型仲間が死にました。」
そうか、としか言えなかった。
ご苦労、ともう一度口に出すと、敦賀は一礼して天幕を出て行った。
仲間の死。
芦多はもし千歳達を失ったらと思うと、途端に空虚な気持ちになった。
悲しいんだろうか。
悲しいに決まっている。
そうは思いながらも、芦多には敦賀の気持ちが想像出来なかった。