早朝。
灯世は兵士達と一緒に、まだ暗いうちに野宿地を発った。
爪鷹と一緒に、大勢の兵士が見送りの列を作る。
兵達は各々、友人と少しの間の別れを惜しんでいる。
その中、爪鷹は灯世の前に立った。
「気を付けて、灯世。
くれぐれも、気を付けて。」
くどいくらいに、爪鷹は念を押した。
「わかってますよ。」
最初は黙って頷いていた灯世だが、最後には爪鷹を宥めた。
「自殺しに行くわけではないんですから。」
「ほぼ同じようなとこに行くって自覚ある?
危ないからね。」
このまま延々と灯世を諭し続けそうだ。
兵士達はそんな爪鷹を不思議そうに見つめている。
灯世も苦笑いするしかない。
「爪鷹さん、わかりましたから。」
皆さん見てます、と囁くと、やっと爪鷹は一歩退いた。
「じゃあ。」
ひらりと、最後に爪鷹は手を振ってみせた。
その後は凛とした表情に戻る。
兵士達は安心したように詰めていた息を吐いた。
やはり、隊長の行動は末端まで影響するらしい。
合流を命じられた班の班長が、足を踏み出した。
次いで、兵士も。
灯世も馬を前に進めた。
すれ違い際、爪鷹の心配そうな顔を目の端に見た。
待ってて下さい、芦多様と一緒に帰って来ますから。
心の中で、誓う。
絶対に、芦多様と一緒になるの。
私はもう、それしか望まない。