「うわーん。」


「何なんだよ!」



再び抱きつこうとした千歳の頭を鷲掴みにし、爪鷹は必死に身体をよじる。



「隊長が怖いよぉ。」



子どものように駄々をこねる。



何かあったのかと肝を冷やした灯世はほうっと息をついた。



「それがどうした!」


「爪鷹の隊に移りたいよぉ。」


「馬鹿!」



一喝すると、爪鷹は立ち上がった。



千歳がバランスを崩して後ろにひっくり返る。



「助けて〜。」


「根性叩き直してもらえよ!」



情け容赦なく斬り捨てると、爪鷹は灯世の腕を引いた。



「行こ、馬鹿が移る。」


「えっ。」



さよなら、千歳さん…。



座りこんでいる千歳に、灯世はせめて手を振った。



「まったく…。
だいたい、千歳は今頃ここにはいないはずなのに。」



ぶつぶつと文句を言う爪鷹の横を歩きながら、灯世はクスクスと笑った。



「何かあったんですかね?」


「ないんじゃない?
あいつのことだから、話を大きくしてるんだよ。」



酷い言い様だ。



とはいえ、チラチラと後ろを気にしているのだから、矛盾している。



それが可笑しくてたまらなかった。



「だいたい、耶粗はしっかりやってるのに千歳は…。」



その時、ドタドタと足音が聞こえ、またもや爪鷹の身体は前にのめった。



「爪鷹ー!」



耶粗だった。