「今夜は交代で見張りを立てる。
こっちもむこうに狙われているんだ、それを忘れるな。」



爪鷹は皆を見回してそう言うと、声を張り上げて解散を宣言した。



戦士は各々散っていく。



爪鷹はそのまま灯世の隣に立っていた。



「よかったね、芦多と同じ位置で戦えるよ。」


「はい。
でも、喜んでばかりいられませんね。」



自分の身は自分で守らなければいけない。



加えて、灯世は守護者として兵達を守らなければいけない。



責任があった。



が、芦多の近くにいられるというのはとても嬉しかった。



「気を付けてよ?
灯世の代わりはいないんだから。」



爪鷹は真剣に言った。



そうだよ、と心の中で呟く。



軍にとっても、芦多にとっても灯世の代わりはいない。



もし、灯世に何かあったら、芦多は…。



だから、生きててもらわなきゃ困るんだよ。と爪鷹は灯世を見つめる。  



灯世は気付かず、遠くを見ていた。



「爪鷹さん、何だか千歳さんによく似た方が走ってくるんですけど。」



淡々と、灯世は言った。



あまりにも平静なので、爪鷹は冗談かと思った。



「何言ってんの、千歳なら今頃…。」 



爪鷹の言葉は最後まで紡がれなかった。



あんぐりと開いた口を閉めることも忘れ、爪鷹は銅像のようにつっ立っていた。



「爪鷹ぁー!」



灯世は爪鷹に飛び付いた千歳をひょいと避ける。



硬直していた爪鷹はそのまま千歳を受け入れる。



ぐえっと聞いたことのないような声を喉からひねり出し、爪鷹は尻餅をついた。



「千歳!」



怒って爪鷹は千歳を引き剥がす。