やっと終わった説教。



灯世は頭を少し下げると、足早に部屋を出た。



いつまでもこんな人間と同じ所にいたくない。



灯世は廊下を曲がった頃になってやっと速度を緩めた。



あぁ、丈の説教が懐かしい。



あの頃は鬱陶しく思っていたが、今は恋しい。



少し気分を慰めようと、庭に出る。



秋の風が心地よい。



結わえずに肩に垂らしたままの髪を風がもてあそぶ。



灯世は風になびく髪を押さえようともせずに、されるがままにしておいた。



気持ちいい…。



今、母様もこの風を感じているのだろうか。



この国のどこかで。



八重が同じことをしていると想像すると、少し心が慰められた。



一つ頷いて、中に入ろうとしたその時。



身体の力がフッと抜けた。



え?



そう思った瞬間、グラリと身体が傾ぎ、視界は中庭に撒かれた白い砂利でいっぱいだった。