翌朝。



思ったよりも早く迎えが来た。



支度を早くに済ませていたからいいものの、まだ日が昇る前だ。



「なんだ、もう来たのか。」



寝むそうな目をぱちくりしながら、辰之助が起き上がる。



「はい、行ってきます。」


「うん。
楽しんで来いよ、灯世。」



灯世は驚いて辰之助を見た。



この人が私を気遣う言葉をかけるなんて、久し振りだ。



今まであの、芦多に助けられた件があってから、辰之助は少し灯世を避けていたのだ。



「ありがとうございます。」



驚いたまま礼を言うと、辰之助は照れて顔を背けた。



まだこの人には純粋にいきている部分があったんだなと嬉しくなる。



それから辰之助は布団にもぐってしまったので、灯世はすぐに部屋を出た。



お願いします、と迎えの男に声をかけ、灯世は房姫のもとに向かった。