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自分が隊長に任命されるなんて思ってもみなかった。
部屋に向かった芦多は大きく深呼吸する。
十中八九、灯世の采配だ。
これは、転機なのかもしれない。
自分の力を発揮してみろという、試練なのかもしれない。
隣で爪鷹が思いつめたようにため息をついた。
「大丈夫か?」
「ああ。
ただ、俺が隊長だなんて。
てっきり芦多だけかと思ってたよ。」
爪鷹が弱ったな、と呟く。
「お前だって力があるじゃないか。」
「芦多ほどじゃないよ。
芦多、自分がどれだけすごいかわかってないじゃないか。」
爪鷹がこんなに弱気になるなんて。
いつも自分達を励ます役だったのに。
「大丈夫だ。
灯世もいるだろう?」
「そうだな、灯世だ。
心強いよ。」
そうだ。
いつの間にか使い魔なんて出せるようになっていたし。
灯世の成長は急激だ。
きっと、今だって修行してもっと力がついているに違いない。
「そういえば、灯世って妖を操れるんだったっけ?」
「ああ、そんなこと言ってたな。」