とうとう。



とうとう魔物が屋敷だけでなく国に散らばった。



村々から救助の依頼が毎夜飛び込み、八重はほとんど家に帰って来なくなった。



まだ低レベルの魔物らしいが、何せ数が多い。



塵も積もればなんとやらだ。



その為、最近は灯世独りで朝から祈祷をしている。



神様、どうか国がこれ以上荒らされませんように。



毎日毎日そう祈っているが、死人も出てきて日に日に状況は悪化しているのが現状だ。



神様…。



今も例外ではなく、灯世は神棚に手を合わせていた。



どうか、お力をお貸し下さい。



神様……。



手首にかけた数珠が手のひらに食い込むほど、灯世はきつく手を合わせた。



時間を見て立ち上がり、外に出る。



そこでは足踏みをせんばかりに急いだ様子の丈が待っていた。



「丈!
どうかしたの?」


「あなた様に辰太郎様から呼び出しがかかりました。」



言い終えるや否や、丈は灯世の手首を掴んで早足に部屋に向かった。