「もうさぁ。
この国終わるんじゃない?」



爪鷹の言葉に二人はギョッとする。



「ああああいつ、何怒ってんだよぉ。」


「知らね、知らね、俺知らね。」


芦多、と小さな声で呼ばれ、芦多は振り向く。



……なんだあいつらの目は。 



“た・す・け・て”


“何とか機嫌直させて”


“た・す・け・て”



助けてを繰り返す千歳と懇願するように手をこすり合わせる耶粗。



私が爪鷹の怒りを食らうではないか。



い・や・だ、と口パクで訴える。



ところが、ふるふると首を振って芦多を見つめる。



なんだか芦多が悪いみたいだ。



「爪鷹…。」



呼び掛けると、爪鷹が子どものように頬を膨らませた。



「何かあったか?」


「………何にも。」


「あったな。」