「灯世のところに行ってくる。」



立ち上がった芦多を千歳は引き止めた。



「あ〜、無理無理。
灯世は八重様と一緒に会議に引っ張られてんよ。」



あぁとかそうとか呟いて、芦多は静かに腰を下ろした。 



「灯世も大変だよなぁ。」


「守護者だからな。」



こういう時、その身の価値の違いを思い知らされる。



自分など軍議に呼ばれることはない。



「灯世が遠くに行ってしまった気がする。」


「なんだよぉ。」



ぽそりと呟いた芦多を、困ったように千歳が叩く。



「そんなこと言うなよ。
灯世は離れてかないって。」


「灯世にそのつもりがなくても…。」


「大丈夫だって、な?」



千歳は言葉を遮り、もう一度大丈夫と言って、強く芦多の肩を叩いた。



「ありがとう。」



千歳は優しく笑った。



いつも馬鹿ばかりやっているくせに、こういうときは千歳が大人になる。



芦多はこういう千歳に助けられてばかりだった。



「爪鷹達のところに行くか。」


「知らせたら耶粗は怒るだろうな…。」



遠い目をして千歳が言う。



「爪鷹の冷気の方が恐い。」



芦多が言うと、千歳が凍り付く。



顔を見合せ、二人して遠くを見つめると、二人は一緒に足を踏み出した。