ひいぃっ、と千歳と耶粗が抱き合う。



「やめろこんな時に。
士気が下がる。」



爪鷹が蹴っ飛ばすと、二人は抱き合ったまま飛び退いた。



「灯世、保ちますか?」


「はい。
なんとか。」



そうは言っているものの、灯世の掲げた腕は震えている。



「待て、こいつ本当に氏神か?」



耶粗が大蛇を指差す。



耶粗に八重が叫んだ。



「間違いありません。
私が昔みた氏神様はこの姿でした。」



しかし、と芦多は唸る。



「氏神がこんなことするか?」



八重は黙った。



彼女も不審に思っていたと顔に書いてある。



「母様!」



灯世が叫んだ。



「あそこ!
なにか首に…。」



目を凝らすと、確かに何かいた。



…虫? 



ハッと灯世が口を押さえる。



「あれ、寄生虫じゃ…。」


「ええ、そうかもしれない。」



待て待て、と千歳が割り込む。



「寄生虫?」



灯世が困ったように答える。



「はい。
きっと、あれに力を吸われてもがいているんです。」


「きっとそうだわ。」