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芦多はぐったりとした灯世を布団におろした。



力が出ない、と言うのは本当らしく、芦多の肩にかかった腕はとても頼りなかった。



「ありがとうございます。」



微笑む顔さえ痛々しい。



芦多はそっと灯世の頭を撫でた。



「前にもこういうのありましたよね。」



灯世は笑った。



「覚えていますか?」


「ああ。
灯世が昔倒れたときのことだろう?」


「はい。」



灯世は恥ずかしそうにしながら、「前もこうやって寝かせてもらったんですよね。」と言った。



「あの時も焦った。」


「……私、迷惑ばかりかけてますね。」


「迷惑だなんて言うな。
そんなこと、思ってなどいない。」



むしろ、弱い部分を曝け出して欲しい。



信頼されていると実感する。



灯世は泣き出す前のように顔を歪めた。



「私、強くなりたいんです。」


「うん。」



芦多は灯世の目からこぼれた涙を拭う。



「芦多様の足を引っ張らずについて行きたい。」


「うん。」



次々と灯世は涙をこぼした。



「手助け出来るまでになりたいのに…。」


「うん。」



灯世は身体を震わせ、芦多に手を伸ばした。



芦多は優しく抱き上げる。



灯世は芦多の腕の中でさらに泣いた。



「私、芦多様の腕が好き。
胸も。
こうやってしてもらえると、安心するもの。」


「望むならいつでも。
灯世専用の腕だ。」



灯世は頷きながら泣いた。



まったく、泣き虫だな。



さらさらと髪を撫でる。



こうして灯世に触っていると、芦多も安心する。



灯世がここにいると感じられる。



芦多は灯世の額に唇を落とした。