「恐かった…。」



何かが切れた。



灯世はギュッと芦多にしがみつく。



芦多も応えるように、灯世の頭を自分の胸に押しつけた。



「私がいない間、ずっとこんな風だったんだろう?」



灯世は泣きながら頷く。



「よく、頑張った。」



灯世は力の入らない腕を必死で動かし、芦多の背中に手を回す。



芦多が気付いて灯世を抱き起こした。



が、布団が滑り落ちたため急いで戻す。



純情すぎる。



しばらくすると、芦多が身体を離した。



「あっ…。」



行ってしまう。



灯世は急いで腕を伸ばすも、思ったように身体が動かず、腕はほんの少ししか上がらなかった。



「灯世?」



芦多はクスリと笑った。



「どこへも行かない。
こんな状態で放置などしない。」



戻ってきた芦多は灯世の着物を抱えていた。



「ほら。」



子どものように着替えさせられる。



その間、芦多は出来る限り目をつぶっていたが。



着替え終わると、芦多は灯世の手を引いた。



「私の部屋に行こう。」


「でも、芦多様がお咎めを受けます。」



芦多は不敵に笑った。



「大丈夫。
辰之助様は気位が高いから、女を抱くのに失敗したなんて言えやしない。」



さあ、と言われて立ち上がろうとするも、力が入らない。



「芦多様、立てない…。」



芦多は眉を八の字に下げた。



「おいで。」



灯世は言われるままに芦多に抱きついた。



ふわりと身体を持ち上げられる。