「まあ、良い。」



辰之助はフッと笑った。



「子どもさえ出来てしまえば、こっちのものだ。」



再び身体が震え出した。



「い…や……。」



逃げなきゃ。



灯世は裸のまま部屋を飛び出した。



が、身体全部が抜け出し切らないうちに引き戻される。



ダンッと音がして、灯世は畳の上に倒れた。



辰之助は灯世を布団まで引きずる。



「辰之助様ッ、止めて下さい!」


「夫婦なんだから、当然のことだ。」



優しく、辰之助は灯世の髪を掻き上げた。



しかし、それも灯世の恐怖を煽る。



「灯世、愛してる。」



直後、痛みが身体を巡った。



自分のものとは思えない絶望的な悲鳴が、喉からもれた。



「いやああぁっ!」


「んっ!」



辰之助は構わずに灯世を愛撫する。



抵抗するが、力が入らない。



もう、駄目だ。



灯世はくたりと力を抜く。



屈辱に耐え、灯世は唇を噛む。



氏神様、これで許されますか?



私はお役目を全うしたことになりますか?



意識が遠退きつつあった。



それでも浮かぶのは、芦多だ。



想うだけなら許されるだろう。



涙が一粒、頬を伝った。



芦多様…。



ガラッと障子が開いた。



驚いた辰之助が動きを止める。



少し、痛みが和らぐ。



意識も戻ってきた。



すると同時に辰之助に抱かれているという嫌悪感もよみがえる。