「あー、暇暇暇ぁ〜。」
部屋に戻った千歳は芦多の布団でじたばたと暴れた。
迷惑極まりない。
自分の部屋で暴れろ。
「ねぇ、芦多、これからどうすんのさ。」
爪鷹と耶粗も、ここにいる。
芦多の部屋はすっかり集まり場と化した。
「わからない。
相手は魔物じゃない、氏神だ。
手も足も出ない。」
「出るよ。
戦おうぜ?」
血気盛んな耶粗はパシンと拳を打つ。
芦多はため息をついた。
爪鷹もため息をつく。
「氏神だって実体はあるんだから、耶粗の意見にも一理あると思うけど…少なくとも術者が必要だな。」
「灯世が駄目なら八重様に頼めばぁ?」
千歳が布団から叫ぶ。
芦多は首を振った。
駄目だろう。
八重には立場というものがある。
大守護者の称号を持っているんだから尚更だろう。
芦多は何よりも占の内容が理解出来ない。
自分と灯世の身分が違うのはわかった。
だが、身分違いの恋がどうして氏神を怒らせるのか?
特に大きな問題は起こしていないはずだ。
芦多は珍しく頭をガリガリと掻いて、畳に倒れた。
耶粗が驚いて場所を空ける。
と、また屋敷が大きく揺れた。
「何なんだよもう!」
既に揺れに慣れた千歳と耶粗が怒って声を上げる。
爪鷹もイライラと指で畳を打った。
この揺れの中器用なことだ。