「そっかぁ。」



何かいい案はないのか、と千歳が唸る。



「灯世!」



叫び声に、灯世が身を竦めた。



八重だ。



血相を変えて、走ってくる。



「今すぐ部屋に戻りなさい、辰之助様が探しています。」



灯世を隠そうと奮闘していた千歳が動きを止める。



なんだいい人なんじゃん、とでも言いたげだ。



「ただでさえ、今はあんな占が出たすぐなんですから。
目立った行動をとると今度こそあなた達は会うことすらかなわなくなりますよ。」


「ありがとう母様。」



灯世が芦多を見る。



芦多は優しく灯世の頭を撫でた。



「行け。」



言うと、灯世はいつものように踵を返した。



八重も頭を下げてあとを追う。



芦多は黙ってそれを眺めた。



背中が遠ざかっていく。



灯世は一度も振り返らなかった。



「さて、俺達も行くか。」



千歳に背中を押され、芦多はそのまま足を踏み出した。