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次に芦多達は政隆のもとへ向かった。
隣の灯世はかなり沈んでいる。
「大丈夫か?」
声をかけるが、灯世は小さく頷いただけだ。
じわじわと寂しさが襲ってきたようで、灯世は芦多の手をしっかりつないでいる。
芦多は灯世を元気付けようと手をぎゅっと握った。
「政隆は何て言うんだろう。」
「頑張れと励まして下さるような気がします。」
灯世は遠くを見つめて笑った。
「だろうな。」
寂しさを押し隠して、政隆は笑うだろう。
頑張れ、わしは味方だと、言うに違いない。
決して行くなとは言わないのだ。
それがわかっていながら、考えを変えるつもりのない芦多は政隆に会いに行く。
少し卑怯だ。
カキン、と金属のぶつかる音が聞こえる。
芦多は首を伸ばして政隆を探した。
……いた。
弟子が稽古をしている中に混じって、政隆は琿坐と剣を交えていた。
二人の動きは早送りされているようだ。
「私、初めてお二方が一戦交えてらっしゃるのを見ました。」
灯世は目を丸くして、二人を眺めている。
「!?」
突然、何かが芦多を突き飛ばした。
構えると、相手の姿が見えない。
「まあ。」
灯世が驚いているその視線の先をみると、あの子…辰清の型の子どもが立っていた。