千歳は表情を消した。



目が、冷たく光る。



その視線の先には、房姫がいた。



「芦多。」


「ああ。」



芦多も、顔の筋肉が強張っていくのを感じた。



彼女はそんな二人に気付かず、しとやかに回廊を渡っている。



千歳が先に足を踏み出した。



その背中は戦々恐々としている。



芦多も後に続いた。



「あら。」



房姫は二人を認め、立ち止まった。



「こんにちは。」



優雅に身体を折るが、二人は返さない。



房姫は不審そうに顔を潜めた。



「ちょっと。」



千歳が房姫を手招く。



「侍女は引っ込め。」



千歳に睨まれ、侍女達はまあっと声を上げる。



「いいの、行って?」



房姫に言われ、しぶしぶお供は歩き去った。



「さて、何かしら?」



房姫は笑って芦多の正面に立った。